ネットでのボーカルスクールが始まってもうすぐ1年を迎える。
12のChapterに分かれた動画教材は
1か月ごとに開示され
先月半ばに最後のChapter12が開いた。
毎回、学ぶ内容のボイトレと
それに注目して歌う課題曲とがあって
課題曲はFBのグループへ提出。
先生からの一言コメントを受け、再提出をしたりする。
レッスン生全体にも開示されるから
みんなに聴いてもらうことになり
コメントを寄せていただくこともある。
私自身も同じ課題曲を何人もの人が歌うのを聴き、
その歌に対する先生からのコメントを読むことになり、
それはとても刺激的で勉強になる。
歌のスタートがシャンソンだった私は
それまで歌に縁がなかったこともあり
課題曲はほとんど初めて聴く歌で
イマドキの速いテンポの曲はとてつもなく難しい。
言葉として成り立っているシャンソンとは異なり
ありえないところで単語が切れていたりする。
幽霊会員からの脱出を目標にやってきた私は
四苦八苦しながらも半分強の課題を提出し、最後の月を迎えた。
最後何回かの課題曲は私にはかなり難しく、
もうこれ以上新しい曲には手を付けず古い曲へ戻ろうと思っていた。
ところが、最終回を開いてみたら課題曲は「愛の讃歌」
まさかの課題曲。
これはパスできない。
しかも他の人の素敵な歌唱を聴いてしまえば私は出せなくなる。
と、とにかく普段のように歌って、提出したのだった。
しかし、「愛の讃歌」の中盤部分は生の伴奏でなければ呼吸が合わない。
それはまあ、カラオケの仕方のないこととして。
「愛の讃歌」は十八番でも何でもないのだが、
私には特別な歌だ。
その昔。
ほぼ半世紀ほど前。
私は高校のギター班に所属していた。
と言っても、演奏より事務方。
ブラスバンド部ギター班としてクラシックギターを練習しているグループを
部に昇格させようと生徒会とあれこれ交渉していた立ち位置。
そのころ、あるグループが練習していたのが「愛の讃歌」
歌に縁がなくとも、毎日毎日聴いていればメロディは覚える。
なんとなく歌うこともできる。
そんな感じの曲。
若い頃、連れていかれた飲み会で、
バレンタインデーにこっそり思いを込めて歌ったりした、そんな曲。
それから四半世紀。
私がシャンソンに踏み込んでしまうきっかけとなったカルチャーの体験レッスン。
その時に用意されていたのが「愛の讃歌」だった。
多分、誰でも聴いたことくらいあるよね、という選曲だったのではないかと思う。
ほんの短い部分を前に出てマイクを持ってグランドピアノの伴奏をバックに、歌う。
膝が目に見えてガクガク震えて
心臓が口から飛び出しそう、ってほんとにあるんだ!と思いつつ、
声にならない声で歌った。
これがすべてのスタート。
もしこの日の曲が「枯葉」だったり「さくらんぼの実るころ」だったりしていたなら
多分私は、今、ここにいない。
10年ぶりくらいに「愛の讃歌」を歌って、いろんなことを思い出した。
人はいろいろな偶然が偶然に重なって今になっていくのだなあと思う。
私が「シャンソンを始めた」と言った時
「お前、熱あるんちゃう?」と言った友よ。
その熱は今も続いているみたいだ。
微熱ではあるけれど。