「行かないで」


あなたがいなくなって、どれだけの時間が過ぎた?

何回、日が暮れた?

何にもわからない‥


いつもと同じやり取りだった‥  違った?

私は気まぐれな言葉を口にし、あなたは笑う‥ はずだった‥

あなたの目にさみしい色が浮かび‥
あなたは目を伏せた。
そしてそのまま‥
ドアへと‥ 

え? どうしたの?
どこへ行くと言うの?
まさか‥ 出て行くの‥?

何よそれ。 冗談でしょ?
私をびっくりさせようなんて思ってる?


言葉の消えた部屋から、あなたは‥ 消えた。


うそよね。
すぐに戻ってくるんだわ。
だって、私がここにいるのに。
だって、あなただから。


そのまま‥ 時間は凍った‥

帰ってくるわよ。
そうに違いないわ。
どんなふうに怒って見せようかしら。
ひどいじゃない。
私をこんな気持ちにさせるなんて。


夜が来る‥
また、夜が来る‥

あなたはいないまま‥ 夜が来る‥

あれから初めて、あなたの名を呼んでみる‥

‥あ‥な‥た‥

あなたは帰って来ないという事実が初めて私の胸に突き刺さる。

行ってしまったの? あなた?
ほんとうに行ってしまったの?
帰って来ないの? あなた?


行かないで‥
行かないで。
行かないで!
行かないで!!!

私はそう言えばよかったの?

あなたに言えばよかったの?

行かないで!

叫んでも叫んでも、もうあなたには届かない‥

行かないで!
行かないで!!

あなたは私のすべてなのよ!

行かないで‥
行かないで‥ ‥


‥ ‥


「行かないで」を歌うにあたって
どんな物語が彼女にあったのか‥思いを巡らせた。

ここはどこ?
彼女はどうしてる?
彼はどこにいる?


彼女は彼女の部屋にいる。
ひとりっきりだ。
彼が出て行って、ずいぶんたつ。
彼女は我儘だった。
それは、彼に対する甘えだった。
それがずっと許されると思っていた。
あの日も。

彼が出て行こうとする時、彼女は言えなかった。
「行かないで」と。
彼が出て行ってからも、言えなかった。
何日も何日も。
心の底から彼の名を呼んでしまった時‥
彼女は初めて、閉ざしていた言葉を口にした。
「行かないで‥」
それは、だんだん大きな波になり
彼女は全身で彼を求めていることを知った。
「行かないで!」

どんなに叫んでも彼に届くはずはない。
それでも、彼女は叫ばずにいられない。
彼に言えなかった、この言葉を。


こんなイメージを作って、歌に臨んだ。

この「行かないで」は、彼に言えなかった彼女の悔恨だと。

でも、歌っているうちに、その思いは変わってくるかもしれない。
また少し違った、彼女のこころが、見えてくるかもしれない。




前回のレッスンで、7人の中、「行かないで」を選んだのは私一人だった。

レッスンを受けられるのがこの1回限りなのか
再度の機会があるのかわからないので
最初から思いっきり、自分流に崩して、歌った。

何といっても10分足らずの持ち時間なのだ。
通して歌っただけで3分強はかかる。
途中でKey変更があれば、5分。
ある程度普通(?)に歌ってから崩してみる‥などと悠長なことは言ってられない。

わかってはいるが、そういうことをすると
思いっきりマイナスに作用する部分ができてしまう。

開口一番、指摘を受ける。

「最初から仕上げようとするから、小さくまとまってしまう」と。

そして問われる。

「彼女はどこにいるの?」

私は私のイメージを告げる。
「行かないで」は、彼女が言えなかった言葉だと解釈した、と。

「それなら後悔やね。」と先生。

「後悔は感情の中で一番強い気持ち。
 だって、どうにもやり直すことができない、取り返すことができないことだから。
 それなら、後半は、思いっきり『後悔』でいきましょう。」

ということになって、後半は絶叫(笑)


あっという間に時間はオーバーして
それでも基本より少し高い私のKeyで、伴奏を入れていただく。

クープレ部分は、歌う時はピアニストさんが合わせてくださるものと思っているので
伴奏で練習するのは難しいのだが
それでも、自分のKeyだと、とてもありがたい。


「さよなら」が、ひとり。

あとはみんな「5月のパリが好き」。


もう1曲、ということになれば
私は「さよなら」かな。

爽やかに美しい曲、には、あまり食指が動かない。
とはいえ、ドロドロ、も苦手なのだけれど(笑)



「行かないで」は
クープレとルフランとのセット、という意味では
「ラ・ボエーム」に似ているのか‥

やはり、前半の間の取り方、言葉のとらえ方が難しい。

そして、同じ言葉の繰り返しが何種類もある‥
ということは、それらを一言一言、意味を持たさねばならない‥
ということは、歌い方が微妙に変わるということ‥

先生が「これは、難しいよ」と言われるだけのことは、ある。


日の目を見るには、時間がかかることだろう。
歌えるのは、当分先のようだ。
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by sararaM | 2010-05-17 08:38 | シャンソン | Comments(2)

Commented by misty♪ at 2010-05-29 23:34 x
いつもながら、厳しいレッスン。。。
いつも、優しく指導してもらうことに慣れてる私が、sararaさんの先生のレッスンを受けたら、いったいどんな指摘の嵐がおそってくるのか、、、
すごく怖いけど、ちょっと受けてみたい気もします。
私って、マゾかな?(笑)
でも、適格な指摘をして貰えるレッスンはグループと言えども貴重ですね♪
これからも、頑張ってね!
Commented by sararaM at 2010-05-30 12:52
☆ mistyさん
こんにちは~
こういう難しい曲は、10分程度の指導で前に進むのは
とてもたいへんなのだと思います。
やっぱり、ある程度の時間みっちりやって
次までの課題をきっちり把握して、自分の練習をしないとね~
mistyさんが優しく指導されているのは
基本的な部分がちゃんとできているからだと思います。
私の場合は、勝手に作曲したりするし(笑)
そんなつもりはないのですが、出しにくい旋律の場合に
無意識に自分流に変えて歌ってしまっているようです。
気がつかないままでいると、それが「ホント」だと思ってしまう。
困ったものです(笑)